スタッド溶接機の使い方❘概要や仕組みを解説

スタッド溶接機の使い方がわからないという方でも、概要や仕組みを知ることで操作をマスターすることができます。 「スタッド溶接」とは、スタッドと呼ばれるボルトやナットを瞬時に金属板に溶接する作業のこと。 &nb […]
スタッド溶接機の使い方がわからないという方でも、概要や仕組みを知ることで操作をマスターすることができます。
「スタッド溶接」とは、スタッドと呼ばれるボルトやナットを瞬時に金属板に溶接する作業のこと。
今回はスタッド溶接機の使い方や仕組みを、初心者でもわかりやすく解説していきます。
スタッド溶接機にまつわるQ&Aや、操作時の注意点も解説していますので、参考にしてみてください。
目次
スタッド溶接機の使い方を解説!強度試験は必要?
引用元:Pixabay
スタッド溶接機は、スタッド溶接ガンと組み合わせて使用します。
スタッド溶接機が電源や操作を司る部分で、スタッド溶接ガンが実際の作業を行う部分であるとイメージするとわかりやすいでしょう。
「難しい」と思われがちなスタッド溶接機ですが、実は次の5ステップで初心者でも簡単に操作が可能です。
- 事前準備
- 母材を準備してアースにセットする
- スタッド溶接機の電源を入れる
- スタッドガンを母材に押し付けてトリガーを引く
- 溶接後の強度試験を実施
これらの手順に沿って、スタッド溶接機の詳しい使い方を解説していきます。
1:事前準備
スタッド溶接時はヒュームと呼ばれる特定化学物質が発生するため、事前準備として呼吸保護具や局所排気設備(法規で定められたもの)を準備します。
特に狭い場所での作業を行う場合は、十分な換気を意識して行いましょう。
また、スタッド溶接を行うとアーク光と呼ばれる眩しい光や、スパッタやラグと呼ばれる飛散
物が発生します。
これらが目や鼻、口に入ることを防ぐために防護服や防護メガネの着用を推奨しています。
2:母材を準備してアースにセットする
次に、取り付け側の母材とアースの準備を行なっていきます。
母材にホコリや油が付着していると溶接不良の原因となるので、溶接前に綺麗に拭き取っておきましょう。
また、母材の種類によって正極・逆極(※1)が異なります。
※1)正極…電極を(ー)、工作物を(+)とする設定のもの
逆極…電極を(+)、工作物を(ー)とする設定のもの
溶接する母材に合わせて正極・逆極をうまく使い分けながら作業を行いましょう。
4:スタッド溶接機の電源を入れる
作業開始のため、スタッド溶接機の電源を入れます。
工事現場など湿気の多い場所や、鉄骨上での作業を行う場合は、安全のため必ず漏電ブレーカーを設置しましょう。
必要な電気設備やヒューズ容量は使用する機器により多少異なりますので、各取扱説明書を参考にしてください。
また、スタッド溶接機の帯電部分に触れてしまうと、感電の恐れがあり大変危険です。
2のアース設置作業や、持ち運んで移動する時は必ず電源が切れていることを確認してから行いましょう。
5:スタッド溶接ガンを母材に押し付けてトリガーを引く
スタッド溶接ガンは銃型の本体にスタッドをセットし、トリガーを引くことで初心者でも比較的簡単に溶接できる機材です。
スタッド溶接機とは別売であることが多く、ご自身で購入・接続して使います。
トリガーを引くとフェルール(※2)の中でアーク(気体放電現象の一種)が発生し、材料を融解・凝固させることで溶接が行われます。
※2)フェルール(セラミックフェルール)とは、アーク発生中に空気を遮断して溶接する金属と空気の反応を防ぐためのもの。熱を集中させ、緩やかに冷却を行う効果もある。
溶接時はガンが斜めにならないように上から押し付け、垂直に引き抜くのがポイント。
初めて溶接を行う場合は、あらかじめ試し打ちをしておくと安心でしょう。
スタッド溶接ガンのトリガーは溶接が行われている間中引き続け、溶接完了が確認できてから離します。
溶接後に再びスタッド溶接ガンを起動させてしまうと、本体損傷の原因となり得るのでご注意ください。
6:溶接後の強度試験を実施
初めての現場や母材でスタッド溶接を行った場合は、作業後に強度試験の実施をおすすめします。
なぜなら、加圧や電圧が適正でなかったり母材との相性が悪かったりすると、溶接不良の原因となってしまうからです。
強度の確認方法はいくつかありますが、一般的には「ハンマリング」と呼ばれる打撃検査が実施されることが多いです。
スタッド溶接の打撃検査は、スタッド 100本を1ロットとして、1本だけを角度15度になるまでハンマーで打撃し、割れや欠陥がない場合は合格とされます。
不合格の場合、同じロッドからさらに2本に対してハンマーでの打撃を行い、両方とも欠陥がなかった場合はそのロッドは合格。
1本でも不備があった場合は、そのロッドの全てに対して補修が必要となります。
スタッド溶接機の使い方で注意したいこと
引用元:Pixabay
次に、スタッド溶接機の使い方において注意すべきポイントを紹介していきます。
スタッド溶接機による事故や怪我を防ぎ、安全に作業できるように注意点をよく理解しておきましょう。
今回は「健康」「作業」「保管」の3つのポイントに分けて注意点を解説していきます。
健康上の注意点
スタッド溶接機を使って作業を行うと、閃光による目の障害や、ヒュームなどの飛散物による中毒障害など、健康面に悪影響を及ぼす危険性があります。
また、誤った操作方法や操作環境で作業を行うと、感電など安全面でも重大なリスクを引き起こす可能性もあります。
- 作業時は閃光が発生するので保護メガネや手袋等の使用を推奨
- 手や身体が濡れた状態で使わない
- 溶接機に結露が見られる場合は使用しない
このように、作業中は適切な服装を意識し、安全に作業するために作業環境や機械の取り扱いに十分注意しましょう。
作業上の注意点
作業を行う際は、以下のことに注意が必要です。
- 降雨時の野外使用は禁止
- スタッド溶接機の上にものを置かない
スタッド溶接機は濡れたまま使用すると感電や漏電の原因になります。
できるだけ余裕を持った広さの作業場を確保し、できれば2人以上で作業することをおすすめします。
保管に関する注意点
スタッド溶接機による事故を防ぐために、保管方法にも十分注意が必要です。
- 極端に暑い場所(または極端に寒い場所)での保管や使用は避ける
- 直射日光が当たる場所での保管は避ける
- 湿気の多い場所や風雨のあたる場所での保管は避ける
正しい保管方法で、操作時の故障や事故を防ぎましょう。
スタッド溶接機の使い方に関するQ&A
引用元:Pixabay
最後に、スタッド溶接機に関するよくある質問をまとめました。
「操作は難しい?」「資格は必要?」など、意外と知らないスタッド溶接機の概要について解説しています。
スタッド溶接機の使い方は難しい?
スタッド溶接ガンの操作は、材料(スタッド)をセットしてスイッチを押すだけなので、あらかじめ機械の設定さえ完了していれば操作の難易度は低いです。
むしろ作業員の腕に左右されず、比較的どんな人でも同じ品質を維持することが可能になるので、実技経験が少ない方も数回の練習で使いこなせるようになるでしょう。
スタッド溶接機の操作に資格は必要?
スタッド溶接ガンの操作には、一般社団法人スタッド協会が発行する「スタッド溶接技術証明書」が必要です。
下記の通り、取得する資格の種別によって作業範囲が異なるので、ご自身の行う作業に合わせて必要な資格を取得しましょう。
級 | 種別 | 作業範囲 |
基本級(下向) | A級 | スタッド軸径22mm以下の下向き溶接 |
専門級(全姿勢) | B級 | スタッド軸径16mm以下の横向き溶接 |
スタッド軸径16mm以下の上向き溶接 | ||
スタッド軸径16mm以下の下向き溶接 | ||
専門級(太径) | F級 | スタッド軸径25mm以下の下向き溶接 |
試験の日程や受講費用に関する詳細は「一般社団法人スタッド協会」のホームページを参考にしてください。
スタッド溶接時にダマになってしまう原因は?
スタッド溶接時、うまく取り付けができずダマになってしまう時は、母材がうまく溶けていないことが原因です。
電流の強さやワイヤースピードの速度など、スタッド溶接機の設定の見直しが必要です。
まとめ
引用元:Pixabay
今回はスタッド溶接機の使い方や仕組みを、初心者にもわかりやすく解説しました。
- 事前準備
- 母材を準備してアースにセットする
- スタッド溶接機の電源を入れる
- スタッドガンを母材に押し付けてトリガーを引く
- 溶接後の強度試験を実施
このように、スタッド溶接機は手順さえわかれば比較的操作は単純で、経験が浅い初心者でも操作しやすいのが特徴です。
しかし、取り扱い方法・作業環境・保管方法によっては重大な事故を引き起こす危険な機材でもあるので、注意点をよく理解して作業を行いましょう。